静岡民医連
ビキニ水爆被災者 小塚博さんの勝利判決の意義について
2000年8月6日
                      全日本民医連被爆問題委員長 聞間 元(生協きたはま診療所所長)
 
 
 アメリカのビキニ水爆実験で被ばくした第五福龍丸の元乗組員小塚博さんが、現在療養中の慢性C型肝炎の原因が当時罹った急性放射能症の際にうけた輸血にあるとして船員保険の職務上療養給付を求めた再適用申請にたいし、社会保険審査会は7月31日、不認定とした保険者の原処分を取り消す画期的な裁決を行いました。今までに静岡県や社会保険審査官が行なった不支給処分、審査請求棄却を完全に否定したもので、わが国の社会保険史上、特筆される裁決です。
 昨年七月に再審査請求を受理した社会保険審査会は、C型肝炎の経過に関する医学的知見を取り入れるなど、請求人の主張を全面的に認めました。ここでも松谷判決と同様に医学的知見を無視した主張が、科学的で道理ある裁定で否定されたのです。
 もともと原処分では医学的な検討を行っておらず、請求人は急性放射能症の治療終了後就労しており、しばらくは治療を受けていないので「社会通念上の治癒」があったとみなされ、現在のC型肝炎は「別疾病」とされていました。
 しかし社会保険審査会は請求人から提出された諸資料を詳細に検討し、被ばく当時の急性放射能症の治療の際の輸血と小塚さんのC型肝炎が蓋然性の高さからいって「相当因果関係のある疾病であるといわなければならない」と認定しました。保険者の「社会的治癒」の主張についても、本件の場合相当因果関係のある傷病であるという客観的事実は否定できないとしています。

 全日本民医連は、長崎原爆松谷訴訟勝利の課題とともに第五福龍丸元乗組員のC型肝炎の救済問題を34回総会決定にもとりあげ、地元静岡民医連をはじめ被爆問題委員会や反核平和委員会の運動課題としてとりくんできました。
 最高裁松谷訴訟勝利判決につづく今回の勝利裁決は、全国の被爆者、そしてビキニ水爆被災者の大きな関心を呼びました。しかし今回の裁決はビキニ水爆被災の後遺障害全体を救済するものではなく、当面は第五福龍丸元乗組員の肝疾患に限られたものです。
 ビキニ水爆実験で汚染された海域で操業し廃棄漁獲物補償を受けた日本漁船は第五福龍丸以外に856隻、乗組員は数万人にのぼりますが、これらの被ばく漁船員の実態はほとんどわかっていません。隠された被ばく者であるビキニ水爆被災漁船員の追跡調査とその救済制度の確立を、あらためて強く政府当局に求めます。

ビキニ水爆被災
 1954年3月1日、マーシャル諸島ビキニ環礁でアメリカが水爆実験。「危険区域外」とされた水域で操業中の第五福竜丸に死の灰が降りそそぎました。静岡・焼津港に寄港後、乗組員ほぼ全員が原爆症と診断され、入院。白血球減少、骨髄機能障害が発生、輸血がくり返されました。その後、乗組員の大多数に肝障害が発生しましたが、福竜丸乗組員には米政府より平均200万円の「見舞金」が支払われて「最終的解決」とされ、被ばく者としても認定されず、船員保険からも補償されなくなっていました。


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