静岡民医連

 この記事はYOMIURI ON-LINE(読売新聞)「静岡:地域情報とニュース」に掲載されたものを、読売新聞の許可を得て転載させていただいたものです。

ビキニ事件半世紀



第2部 事実を見つめて<4>



明るみに出たC型肝炎 健康被害「早急調査を」
 「なぜ感染を知らせなかったのか」

 「私もわからない。トップの判断だ」

 第五福竜丸元乗組員の健康状態を毎年調査している独立行政法人「放射線医学総合研究所(放医研)」(千葉市)。一九九五年、ここを訪ねた浜北市の医師聞間元(ききまはじめ)(59)は、当時生存していた元乗組員十五人中、少なくとも十二人が慢性のC型肝炎を患っているという衝撃的な事実を知った。しかし、本人たちにはきちんと伝えられていない。担当医の答えに、聞間は耳を疑った。
写真:写真説明
「県内のほかの被災船の調査も必要」と訴える聞間医師(浜北市の生協きたはま診療所で)
 聞間は同じ年に元乗組員の健康調査に取り組み始めた。それまで、県内の原爆被爆者の健康診断を続けており、広島・長崎の被爆五十周年に合わせた国際シンポジウムで、元乗組員の現況を報告する準備を進めていた。
 「そっとしておいてくれ」と断られることも多かったが、聞間は七人から聞き取りをした。その中で、元甲板員の小塚博(73)がC型肝炎にかかっていることを知った。感染は、放医研からではなく、地元の病院で聞かされたという。

 原因は何か。聞間は放医研での調査から、被ばく当時の輸血による感染の可能性が高いとみていた。

 シンポをきっかけに「ビキニの被ばく」と「輸血治療による肝炎感染」という二重の苦しみが世に知られた。しかし、聞間にはもどかしさが募った。広島・長崎の被爆者には法的支援があるが、ビキニ被災者は何の助けもない。「自費で慢性の肝炎と闘っている。『三重苦』の状態だ」

 その後、肝炎発症を被ばく治療の輸血が原因とする「労災事故」ととらえれば船員保険が適用できるかもしれないと、九六年に弁護士ら協力者と研究会を立ち上げ、小塚の船員保険適用を支援した。

 事件後の輸血治療と長年を経た後の発症との因果関係を認めない県に対し、小塚や聞間らはねばり強く戦った。小塚が体調を崩す中、開かれた公開審理で、聞間は代理人として発言した。

 「現在では証明の方法がない(当時の輸血と感染の)因果関係を持ちだされたのでは患者は救われない。入退院を繰り返して苦しんでいる。そこをくんでいただきたい」

 二年越しで国は保険再適用を認め、同様の被災者が保険での治療費支援を受けられる道を開いた。しかし、その後、福竜丸乗組員で保険適用を受けたのは一人だけだった。

 聞間は「長い間に乗組員の間で、補償問題を言い出すのは後ろめたいという雰囲気が出来上がってしまった」と思っている。そして、気になるのは、福竜丸以外にも、被災とのつながりもわからないまま、今も健康被害に苦しむ元船乗りたちがいると推察されることだ。「フォローして調べる体制がないまま半世紀が過ぎた。早急な調査が必要だ」(敬称略)
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